【跡部】All′s fair in Love&War
第22章 一年の計は元旦にあり
「…あ、あれ!?」
「アーン?どうした…あいつら、」
ふと思い出したように後ろを振り返ると、誰もいない。焦ってスマホを見るも、誰からも何の通知も無かった。
「ど、どーしよっ…」
「別にほっときゃいい、勝手知ったる場所だ。揃って参らなきゃならねぇ訳でもないし、終わったら出口で会えんだろ」
そう言って、さして気にもせず歩き出す跡部。置いていかれて一人にされてはたまらない、と後を追い、隣に並ぶ。
気付かれないように、ちらり、とその顔を盗み見ると。相変わらず真っ直ぐと前を見ているものだから、眩しくて見ていられなくなる。
隣を歩くのが、当たり前のようになったのはいつからだっただろう。クラスも一緒、部活も一緒と来れば一緒にいる時間が一番長くなるのは当然だとしても。
出会ったばかりの頃は、二人きりになるだけでどきまぎしていたなぁ、なんて。今でもドキドキしない訳じゃないけれど、反対に安心を感じるようにもなった。
そしてふと周りに目をやると、こちらを見る視線をあちこちに感じる。跡部を見ているんだ、とすぐにわかる。そしてきっと、何故私のような女が隣に、と思っているんだろう。
跡部は、誰も否定出来ないイケメンで。背も高くて、堂々としていて。自分が人の目を惹く事を知っていて、その上で振舞っている。
反対に私は、自分に自信なんて全く無くて。背は低いし、スタイルも良くないし、顔も可愛くないし。ついでに勉強もそこそこしか出来なくて、丸文字で、女々しくて、意地っ張りで――
「今年は、着物じゃねぇんだな」
「…え!?あ、去年は着てたっけ。待ち合わせの前に茉奈莉ちゃんと会ってたから、着物は煩わしくて」
「来年は着ろよ、珍しく似合っていたんだからな」
「来年は」という言葉に、自分の行く末は棚に上げて嬉しくなって、考えといてもいいけど、なんて可愛くない返事をした。どうやら、来年も一緒に居ていいらしい――実際は、叶わないのだけれど。相変わらず自分に自信なんて持てないけれど、この三年間は、私の誇りで、跡部の隣に立つ自惚れを与えてくれる。
「所で珍しく、って何よ」
「深い意味はねぇよ」
「…ふーーん?」
「あるとしたら、松元が感じたままの意味じゃねぇか?」
じろり、と睨みあげると、意地悪な笑み。はいはい、どーせ馬子にも衣装ってヤツですよ。