【跡部】All′s fair in Love&War
第22章 一年の計は元旦にあり
人波の中、よく見知った顔ぶれを見つけ。茉奈莉ちゃんに目配せをして、駆け寄った。
「おっせーぞ、松元、守河!」
「ごめんごめん、がっくん!」
賑やかな雰囲気に、先程までの寂しさだとかは吹き飛んでしまう。後ろからゆっくり歩いてきた茉奈莉ちゃんも同じ気持ちのようで、ニコニコと笑ってジロちゃんと話している。
「おめでとうさん、松元」
「あけましておめでとう、忍足!」
挨拶を交わしながら、ぐるり、と皆の顔を見る。何故だろう、もうすぐ迎える別れを口に出してしまったからか感慨深く見えて、少し俯く。でも、勿体ない、と顔を上げた。
そう、あと少しだからこそ。いつもより楽しく過ごそうって、だから茉奈莉ちゃんにも言わないでって言ったんだから――
「跡部、あけましておめでとう」
「松元、Happy New Year」
「あはは、Happy New Year、跡部」
やたら良い発音の挨拶に、負けじと返す。それでもやっぱり特別、声が震えてしまった事は、きっとこの喧騒の中バレていないだろう、と。先に立つ跡部を追って歩き出した。
「今年も凄い人だねー」
「毎年毎年、誰も飽きねぇもんだな」
そう言ってる跡部もでしょ、と笑うと、軽く睨まれる。少し首を傾げてみると、跡部も耐えかねたように薄く笑うから、顔を見合わせたまま笑ってしまう。
一年の冬、初めて皆で過ごしたお正月。私たちは同じように、この神社にお参りしていた。この辺りで一番大きい、人手の多い初詣スポット。屋台なんかが並んで明るい雰囲気のそこは、イギリス帰りの跡部には新鮮だったようで、キョロキョロと辺りを見回しながら歩いていた姿を思い出す。
でも二年の冬、二回目の皆で過ごすお正月には、すっかり人の多さに閉口してしまい。執事のミカエルさんに命じて裏から本殿にお参りに入ろうなんて言うから、皆で必死に止めたんだった。
そして三年の冬、今年は。跡部は何も言わず、この雰囲気を楽しんでいる様子だった。真っ直ぐと前を見て、拝殿を目指す。小銭もしっかり用意しているみたいで、珍しくポケットからちゃりちゃりと音が鳴っている。
恐らく同じ事を思って、一緒に笑っている事が嬉しくて。新年なんだから過去を懐かしむまい、なんてさっきまでの決意は早々と捨てた。