【跡部】All′s fair in Love&War
第20章 おわりのはじまり(前編)
「ねー、守河はもう部活とか決めてんの」
「そうだなぁ、今は美術部に入る、つもり」
「つもり?」
純粋な瞳と問いかけに、思わず言葉が詰まる。特に何もやりたいことが無くて、思いついたのがそれだったから、なんて。彼に言うのを何故か躊躇う。
「そんなに定まって無い感じならさ、マネージャーに来てくれよー!」
「マネージャー…?テニス部の?」
「そーそー!マネージャーになるには、部員の推薦がいるんだ!俺が推薦すればきっとオッケーだしー!」
テニス部の、マネージャー。思っても見なかった選択肢が現れ、少し答えに迷う。そして、迷っている自分に戸惑った。いつもならにべも無く断っているような不躾な誘いを、私は嬉しく思っているようだ――
「ねぇ、それって、もう一人誘ってもいいの」
「んー、大丈夫だと思うー。万年募集中だ、って皆言ってるしー、ただぴったりな人がいないんだってさー」
勝手に決めて、怒るかな?でも、怒ったような素振りを見せながら最後には許してくれる、そんな所も好き。ごめんね、千花ちゃん、と心の中で手を合わせて――
「なら、1年A組の松元 千花ちゃんと、今日テニス部の見学に行かせて貰うわね」
「マジマジ?やったー!跡部に連絡しとこっ」
何故、この時こんな、いつもならしないような選択を下したのか――その時は自分の中でも整理を付けられなかった、けれど。
「宜しくね、芥川くん」
「あ、それやだー。さっきみたいにさ、ジロちゃん、でいいよ」
――親とか兄弟がそう呼んでてさ、それならちゃんと起きれんの。そう笑うジロちゃんに、自然と笑い返す。これからも、起こす役目を与えられたのだ、と。
「うん、ジロちゃん。宜しく、ね」
今なら、その時嬉しくなった事、テニス部に入ろうなんて気まぐれを起こしたこと、その理由も、ちゃんと分かっている。