【跡部】All′s fair in Love&War
第17章 夏と熱と余韻と原因
しゅるり、と音を立ててネクタイを外し、それを彼女の両手首に巻き付け、きつく縛る。氷帝の制服である赤いネクタイは、白く細い彼女の腕に良く似合う。
怯える目を前に笑ってやると、ほんの小さく悲鳴めいた声が上がったが、しかしそれは彼女の強情さと向こう見ずさによって、唇で押し留められた――そこで、声を上げてくれればいいものを。
空調が完璧に行き届いた広い部室の中には、俺と松元先輩しかいない。松元先輩にお願いしたいことが――そう言うと、簡単に二人きりになることが出来て、今に至る。
「ヒヨ、何して、るの」
手首を一纏めに縛られ、机の上に転がされ。スカートはめくれあがって、何とも際どい部分に留まっている。扇情的な姿は、いつもの松元先輩からは想像がつかなくて、多分俺しか見た事がないのだろうとほくそ笑む。
ただの悪いノリのつもりだった。この人は、皆の事が好きで、皆に好かれる人だ。しかし、ただ一人、特別な存在がいる。そこに近付きたくて、俺だけを見て欲しくて、部室に誘い込み、後ろ手に鍵を閉めた。ずい、と顔を寄せてみると、先輩は照れもせずに、どうしたの?といつも通り明るく尋ねるのだ。
――これが、跡部部長だったら?
そう考えるとやるせなくて、トン、と彼女の肩を押すと。想像以上に軽い彼女の身体は、いとも簡単に揺らいだ――
いつも第二ボタンまで空いている、胸元に口を寄せカリ、と噛む。それからキツく吸い上げると、白い肌によく映える紅い花。
痛みで涙目になっている松元先輩に、これでもうカッターのボタン開けられませんね、と笑いかける。先輩の目にみるみる涙が溜まり、もうすぐ溢れそうだ。それを横目に更に一つ、二つと花弁を散らす。
「ヒヨ、やめて、」
お願い、と。いつもの勢いは何処へやら、弱々しく懇願する松元先輩に、嗜虐心が擽られる。もっと色んな顔が見たい、そう思いながらカッターシャツに手をあて、一気に前を開く。ぶちぶちと音を立てて飛ぶボタンに、いよいよ松元先輩の目は大きく見開かれ、すっと頬に涙の筋が走った。
そんなに開いたら目ん玉落ちちゃいますよ?――そう揶揄するように言っても、松元先輩の目は大きく開かれたまま、こちらを真っ直ぐに捉えている。黒い闇の中に、俺の顔が浮いている。