第14章 恋心
佐助目線
「やっと話が出来そうだ…」
俺のいる場所からさほど遠くない所で、二人の女の子達と甘味を食べるなおがいる。
三人の話から推測するに、もうすぐ二人とは離れる。
周りになおの護衛も見当たらない。
「安土城の守りがあの日から厳しくなったからな…」
理由は薄々分かっている。
『会えることが嬉しくて、少し油断したな…』
顔まで見られたかは分からないが、安土城に入った事は多分バレている。
「…まだまだだなぁ」
茶屋で二人とは別れた様で、城へと戻るなおを呼び止めるべく背後へとまわる。
「なおちゃん。そのまま前を見てそこの角を曲がってくれる?」
近づきそっと声をかける。
一瞬ビクッと身体を震わせたが、小さく頷いてくれた。
暫く歩くとそっと手を握り、一軒の長屋になおを招き入れる。
「佐助兄!逢いたかった!元気にしてた?」
なおは部屋に入るとすぐに、嬉しそうな声で話を始める。
「しっ。少し静かにして…」
俺はなおの唇にそっと手を当てる。
「…居たか?」
「いや。どこへ行かれたのだ?」
遠くで声が聞こえる。
『やっぱり、今日も付いてたか…』
パタパタと足音が遠くなるのを確認する。
「今日もあまり話が出来そうにないね」
なおは少し淋しそうな顔をする。
「佐助兄はここに住んでるの?」
気を取り直した様になおはしゃべり始める。
「いや…ここは仮住まい。たまにここにいる」
「そっか…いつも会える訳じゃないんだね」
淋しそうな顔がたまらくなり、なおを抱きしめる。
「前に話したけど、なおちゃんを迎え入れる準備が出来たんだ。こっちに来ない?」
俺はなおから身体を離すと、顔を見る。
「えっ…」
戸惑った様な表情を見せる。
「今すぐって話じゃないよ。でも、出来るだけ急いでほしい」
「何で?」
「近々大きな戦が起こる。その前に来てほしい。それに今は言えないけど、逢わせたい人もいるから…」
このまま安土にいれば、間違いなく戦に巻き込まれる。
『守りたい』
そう思ったのに…。
「……ごめんなさい。私、行けない」
なおは泣きそうな顔で俺を見る。
「何で?」
出来るだけ追い詰めない様に、優しく声をかけた。