第14章 恋心
第三者目線
『立ち聞きをするつもりはなかったが…』
信長は、秀吉に奪われた金平糖を探しに天主を出た。
なお達の笑い声が聞こえて思わず、そちらへと足を向けた。
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「お屋形様。なおの部屋に子どもを二人泊まらせてもよろしいでしょうか?」
秀吉は天主を訪ね、信長になおの願いを伝えた。
「いかにした」
見ていた書簡から目を外し、秀吉に問う。
「…と言うわけでございます」
秀吉はなおの想いを信長に告げる。
「よかろう。なおへの褒美だ」
「では、なおに伝えてまいります」
秀吉は頭を下げると、出ていこうとする。
「秀吉」
信長は秀吉を呼び止める。
「はっ」
「なおの病はいかようか」
この頃忙しく世話役を言いつける事も出来ず、食事以外会う事もないなおが気になりそう問いかける。
「今の所大事ない様です」
「そうか…下がれ」
「はっ」
秀吉は頭を下げ出ていった。
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『今日であったか』
ボソボソと話をしているが、楽しそうな様子が外からでも伝わってきて、笑顔であろうなおを思い浮かべ、信長は無意識に頬を緩める。
『…楽しめているのならばそんなに良いことはなかろう』
そう思い信長は気づかれぬうちにその場を離れようとした。
【なお様も想う方がおられるのですね】
漏れ聞こえたその言葉に、信長の身体はピクリと震え。動けなくなった。
『なおに想う奴がおるのか』
信長の頭には、写真の男が思い浮かぶ。
その瞬間、血が沸き立つが、それを何とか抑える。
それ以上の話を聞くことが出来ず、音を立てぬ様その場を離れた。
『何でも思うように手に入れてきた。なお…貴様だけは手に入れていけない…俺と共にいて幸せになどなれぬ…』
求めてはいけないと想えば想うほど、求める心が大きくなっていく事に、信長は気付いていた。
「なお…お前の身体も、心も、全てが欲しい」
心とは裏腹の言葉が口からもれ、切ない声はなおに届かず儚く消えた。