第14章 恋心
なお目線
「みんな、優しい人でしょう?」
私達は夕餉の話をしていた。
「「はい」」
「今日の夕餉は政宗が作ってくれたんだよ」
「「えっ!」」
二人はビックリしている。
「いつもは『俺が作った〜』って言うんだけど、今日は二人が益々緊張しそうだから言わなかったって言ってたよ。昼餉もたまに作ってくれてるのは知ってるのにね。でも、二人の好きなもの作ったからって…」
私はクスクスと笑う。
「そうなんですね。緊張であまり覚えてないけど、美味しかったです。明日、お礼を言います」
春は真剣な顔で言った。
「うん?梓?どうしたの?」
そんな春の隣で梓が固まっている。
「えっ!あっ。すいません」
顔を覗き込むと、梓は慌てた様に言うけど、まだ何処か上の空だった。
「梓は、政宗様が…」
春が口を開くと
「春!言わないで…」
珍しく梓が大きな声を出す。
その声にびっくりして梓を見ると、その顔は真っ赤だった。
「梓?熱でも出たの?顔紅いよ」
私は梓の額に手を当てる。
「…あっ。大丈夫です。」
黙り込む梓を見て春は微笑む。
「春?さっきなんて言おうとしたの?」
私が問うと
「政宗様が好きなんです」
「春!言わないでって…」
梓は益々真っ赤になる。
「えっ!えーっ!」
私はびっくりして梓を見る。
「…なお様。誰にも言わないで下さいね。」
そう言って微笑んだ梓は、今まで以上に可愛かった。
「…叶わないのはわかってるんです。年も下だし、出自も釣り合わないから…でも、お逢いするたびに胸が苦しくて、ドキドキして…」
梓はポツポツと話し始める。
「…胸が苦しくて、ドキドキするの?」
「はい」
梓はまだ紅い顔で微笑んだ。
「それは、病気じゃなくて?」
私は自分の胸もドキドキするのを感じる。
「はい。政宗様を見たり、好きだと想うと胸の奥がきゅうっと締め付けられて、苦しくてドキドキします」
梓の言葉に、私はある人を思い浮かべる。
「…つっ。」
胸が苦しくて、顔はきっと紅い。
「なお様?大丈夫ですか?」
春が心配顔で私の手をそっと握ってくれる。
そして、顔を上げた私を見つめて呟く。
「なお様も想う方がおられるのですね」
その言葉に…私は自分の気持ちに気付いてしまった。
『私は…信長様に恋をしている』と…