第14章 恋心
なお目線
褥を引いてもらって、秋野には下がってもらった。
『なんか修学旅行みたい』
私はうきうきしながら、二人を見つめる。
「まだ、少しお話してもいい?」
私が尋ねると二人は笑顔でうなずいてくれた。
「なお様。ありがとうございました」
梓と春は頭を下げる。
「お礼を言うのは私だよ。いつも本当にありがとう。
二人が居てくれて本当に助かってる。
本当にありがとうございます」
私は二人をしっかりみてお礼を言った。
「そんな、なお様頭を上げてください」
春は慌てて声をかけてくれる。
「お礼合戦はここまでにしようか?いつまでも、ありがとう言い続けてたら、夜が終わっちゃうから」
ふふっと笑うと二人は笑顔で答えてくれた。
「ねぇ。二人は前からお友達なの?」
「はい。幼馴染です。春の母と私の母が友達で…春の母はこちらで女中をしています」
梓は春を見つめると優しく笑いかけている。
「そっか」
それから、家族の取り留めもない話をたくさんしてくれた。
梓の母は柚を産んだ時に亡くなった事。父はここで働いている事。
逆に春は父を戦で失くした事。兄弟が居ないけど、梓達が居てくれるから淋しくない事。
そんな話をたくさんした。
「なお様は?」
春が聞いてくる。
「ふふっ。私両親も兄弟も居ないの」
二人の表情が曇る。
「けどね。秋野が母で、秀吉さんが兄になってくれたんだよ。
だから、淋しくないよ」
私は笑って二人を見る。
「それに…今日二人も妹が出来たしね」
私はそう付け加えると、二人も笑顔になってくれた。
「なお様。不束な妹ですけど、よろしくお願い致します」
梓は少しおどけて言ってくれた。
「あっ。私も…お願い致します」
春は少し照れた様に言ってくれた。
それが可笑しくて、三人で暫く笑っていた。