第14章 恋心
なお目線
『うふふっ。今夜が楽しみだなぁ〜』
私は朝餉の時間から、うきうきを抑えられないでいた。
「そんなに嬉しいか?」
「うん。秀兄ありがとうございます」
にこにこ笑顔の秀兄に、頭をさげる。
『秀兄に相談して良かった』
あれから毎日楽しく子ども達と遊んだり、時には勉強したりして過ごしていた。
でも、心の中で梓と春の事がずっと引っかかっていた。
……………………………………
「どうした?浮かない顔して…」
夕餉の後秀兄は声をかけてくれた。
「うん。梓と春の事で…」
「そうか、お茶でも飲むか?」
「うん」
私は秀兄を自室に案内するとお茶を準備する。
「どうぞ。」
「おお。ありがとう。で、どうしたんだ?」
私は今まで二人の様子を話す。
二人は最初よりもっと、働いてくれるようになっていた。
他の子の面倒は勿論、お膳の上げ下げ果ては政宗の料理の補佐まで。
「私より働き者だよね。ふふっ」
私は少し笑う。
「その働き者の心配をしてるんだ。お前の方が働き者だぞ」
秀兄は頭をグリグリと撫でてくれる。
「ありがとう。それでね。やっぱり子どもらしく遊んでほしいって思いは変わらなくて、それとなくしてることから離そうとするんだけど…」
私は一つ溜息ををつく。
「それが当たり前なんだよね。当たり前の事をやめるのは難しいのは、私もわかるから…ね」
「そうだなぁ。褒められる事だからな。普通は…」
うーんと秀兄は腕組みをして考えてくれる。
そして、膝をポンと叩くと嬉しそうな顔をする。
「褒められる事だから、褒美があったらどうだ?」
「褒美?」
「俺もそうだが、お屋形様に褒められたり、褒美を貰うととても嬉しいんだ。それは、お屋形様の役に立っていると認められる事だからな」
秀兄は少し誇らしげに胸を張る。
「梓と春にとってのなおは、俺にとってのお屋形様みたいなものだ。だったら日頃の労を労ってやれば喜ぶと思うぞ」
「褒美かぁ〜。」
私はそう呟きながら考える。
『物だと子どもらしくとは違うし…特別な何か…そうだ!』
私は秀兄を見ると、どうした?と言うように小首を傾げる。
「秀兄。頼みがあるの!」
私は満面の笑みで頭を下げた。