第13章 ふれあい
第三者目線
安土城に子どもたちの笑い声と、なおや女中たちの笑い声が響いている。
「おー。楽しそうだなぁ〜」
その声に誘われるように秀吉は庭へと出る。
「秀兄!」
なおは秀吉に駆け寄る。
「凄い汗だな〜〜。」
「うん!久しぶりにこんなに汗かいたよ。みんな元気一杯だから」
なおは手拭いで汗を拭く。
「…なおさま。遊ぼう」
下を見ると柚は、袖をちょんと摘みなおを見つめている。
「ごめんね。じゃあ、秀兄またね。柚ちゃん次は何する?」
そう言いながら駆け出すなお。
「こら!まだ万全じゃないから、無理するなよ」
「は〜い。わかってま〜〜す!」
にこにこしながらなおは秀吉に手を振ると走っていく。
「ありゃ、分かってないな…」
「分かってても手を抜かないのが、なお様の良いところで、困ったところです」
いつの間にか近くに来ていた秋野は微笑む。
「今朝はどうだった」
「ふふっ。兄としては気になりますか?」
「まぁ…な。あの笑顔を見て少し安心したが…」
秀吉は1つ溜息をつく。
「気付き始めておりますよ」
いつもと違う声色に、秀吉は秋野の顔を見る。
先程とは違う凛とした表情で、なおを見ている。
「私はなおを我が子の様に想っております。
どの様な事になろうとも、側を離れるつもりはございません。
ただ、なおを傷つける方がいたならば、それがたとえ信長様であっても…許すつもりはありません」
その眼には強い決意が滲んでいる。
秀吉はその眼に何を言う事も出来ないでいた。
「…戯言です。お忘れ下さい」
暫し沈黙の時が流れた後、秋野はいつもの微笑みで秀吉を見た。
「…秋野」
「それでは、なお様の元へ参ります。また、無茶をされてはこちらの身が持ちません」
いつもの調子に戻った秋野はなおの元へと歩いていく。
『あの秋野が…敬称を忘れるほど感情的になるとはな…』
秀吉は秋野のなおへの愛情の深さを垣間見た。
「俺も…同じ覚悟を持とう。兄として…」
誰に言うでもなく、秀吉は呟いた。