第12章 初恋
なお目線
「また…寝ちゃった」
気がつくと日はだいぶ高く登っていた。
ゆっくりと身体を起こすと、褥にゆっくりと座る。
「カタン」
音がする方を見ると、カラフルな金平糖が入った小瓶が転がっていた。
手に取るとキラキラと日の光を浴びて、輝く。
「…信長様」
それを置いてくれた人の顔が目に浮かぶ。
「んっ。」
胸がトクンとまた跳ねる。
ドキドキと心臓が早い音を刻んでいく。
「私…どうして…」
小瓶を抱え、胸を押さえるように膝を抱え込む。
「なお様…」
声と共に暖かなぬくもりが私を包む。
「秋野…私、どうしちゃったのかな」
「…お疲れなだけですよ」
「違う…違うの…」
顔を上げると涙がポロポロと溢れる。
『だって…信長様の時だけ…』
その言葉は声にならなかった。
「なお様。今はお疲れなのです。元気になって考えましょう。秋野はずっと側におりますから…」
秋野は言葉にならなかった想いを汲んでくれる様な言葉をくれる。
「今日から、子どもたちも来ていますよ。なお様が居ないと、遊び道具の使い方もわからなくて…お迎えに上がりましたのに…」
ふんわりと笑顔の秋野につられる様に、顔が緩むのが自分でもわかった。
「…支度するから手伝って」
「はい。ではまずお顔を拭きましょうか」
秋野は手拭いを濡らし渡してくれる。
少し冷たい手拭いを顔に当たると、気持ち良くて心が少し浮き立つ。
「ありがとう」
秋野にお礼を言う。
「お元気が出たようですね。では、着替えましょう」
着物を用意してくれる秋野を見る。
『まだ少しモヤモヤするけど…今は考えても分からないって事だよね。秋野』
その後ろ姿を見ながら心の中で呟いた。