第12章 初恋
なお目線
「なんか私、こっちに来てから寝てばかりだなぁ〜」
城は静まり返り夜中だと知れる。
私はそのまま外へ続く襖を開ける。
「少しだけ…」
自分に言い訳する様に庭へと出ると、ブランコに向かう。
「うわぁ〜可愛い…でも、何か見たことある様な?まっいっか」
私は早速ブランコに乗ると、足をついたまま少しだけブランコを揺らす。
さわさわと風が心地よくて、ついつい足を大きく振り漕ぎ出す。
「空が近い…こっちは星もたくさんだなぁ〜」
私は曲げていた手を伸ばすと、目を閉じる。
ふわふわした浮遊感だけが身体の支配して、そのまま何処かへ行けそうな気がする。
この感覚が私は大好きだった。
目を開けてブランコに立ち上がる。
ぐんぐん漕ぐと手を離し足を強く蹴り出す。
「あっ…」
少しバランスが崩れ着地が乱れる。
私は衝撃に備えて思わず目を閉じる。
けど、その衝撃は柔らかくて
『…あれ?』
「貴様は何をしている」
その声に目を開けると、信長様の顔が至近距離にあって、思わず身体を離そうとする。
「何をしている…と言ってる」
信長様は私の身体を離してくれない。
また、ドキドキと心臓が煽り始め、顔が紅くなるのがわかる。
「あっ…あの、ブランコから飛んで…」
「そんな事は見てたから知っている。何故こんな時間にここにいる」
「…早く寝ちゃったから、目が覚めてしまって…ひでに、秀吉さんがブランコが出来たと言ってたから…つい…」
私は顔を上げられないままボソボソと呟く。
「…そんなにあれが好きか?」
少し呆れたような声。
「好きです。ふわふわして…信長様も乗ったら分かります」
そう呟くと信長様は身体を離し、私の手を引きブランコへ。
「どうするのだ」
「あ、あの、まずここに腰掛けて…」
説明通りに信長様は漕ぎ出す。
ゆらゆら揺れる信長様の隣。私もリズムを合わせるように、漕ぎ出した。
「楽しい…ですか?」
横を向き信長様に声をかける。
「あぁ。不思議な感覚だな」
信長様が私を見つめる目は、また優しくて…心臓がドクンと煽る。
「また痛むのか」
信長様はブランコを降りると、私のブランコも止め横抱きにすると、褥へと運ばれる。
「眠れなくてもいい。休め」
そっと瞼に手が置かれた。
ドキドキと高鳴る胸が治らないまま、静かに夜は更けていった。