第12章 初恋
第三者目線
「…秋野」
「すいません。声を掛けそびれてしまって…」
微笑みながら皆の近くへと座る。
「なおの様子はどうだ?」
「家康様から頂いた眠り薬で少し寝て頂いています。疲れはまだあると思うので…」
秋野は少し切なげに笑う。
「秀吉様。なお様はまだ心の傷が癒えておりません。今己の気持ちに気づいたとて、それを受け入れる余裕もないでしょう」
秋野はゆっくりと語り出す。
「信長様もまた…なお様の事好きでいらっしゃいますが、それを受け入れられずにいる様に思われます」
「そういやそうだよな。信長様ならこんなまどろっこしい事しそうにないのに…まぁ、身体のことは置いといても…」
政宗の言葉に皆が頷く。
「ですから…このまま見守ってあげたいのです」
お願いしますと秋野は皆に頭を下げた。
「…頭上げなよ。少し面倒だけど、心の臓が悪いってことにでもしとく?」
家康は冗談のつもりで言うが
「それはいい!このままだとなおが心配から本当に病に伏せそうだからな。栄養になる薬湯でも毎日飲ませれば、元気にもなるだろうし!」
それは名案だとばかりに秀吉は同意する。
「くくっ。騙されてても気付かんだろうしな」
光秀は面白そうに笑う。
「冗談のつもりだったのに…」
ふぅと溜息がでる。
「なお様は病でいらっしゃるのですか!!」
慌てる三成を横目にまた溜息をつく。
「…お前は黙ってて」
「いいじゃないか。1人くらい本気で信じてる方が面白…都合がいいだろ」
愉快そうに政宗が笑う。
「…面白いって」
家康はまた溜息をついた。
「なお様はそんなにお悪いのですか?」
「だから、黙れ…悪くないから」
三成にイライラが募って来た家康は立ち上がる。
「とにかく…信長様に伝えて来ます。俺しか診れない様にしないと、バレても厄介でしょ」
「俺も一緒に行こう」
秀吉も立ち上がりその場は散会となった。