第11章 近づく距離
第三者目線
信長は城に着くや否やなおを家康の元へ連れて行く。
「家康おるか」
「だから、返事をしてから…ってなおどうしたの?」
「胸が苦しいと言う。診てやってくれ。俺は天主に戻る。後で報告に来い」
信長はなおをそっと下へ降ろすと、部屋を出ていった。
「…顔も紅いけど、熱でも出たの」
家康はゆっくりとなおの額に手を当てる。
「熱はないね。他に身体におかしなところはある?」
家康は部屋に来てから何も喋らないなおを心配する。
「…何ともない。ドキドキも治ったから大丈夫…」
なおは顔を上げて少し微笑む。
「一応、いつからそうなったのか?教えて…」
「えっと、前もあったの…」
恐る恐る言うなお。
「…怒らないから、で…」
「今日は、信長様と買物に行って…お話してて、信長様が私に金平糖を買ってくれるって…で、その時に凄く優しい顔で笑ってくれて……そしたら…。
前はね。戦で信長様の馬に乗ってる時に、戦ってる信長様の眼が綺麗に見えて…。
ねぇ。家康。私何か病気なのかな?」
そう聞いてくるなおに家康は唖然とする。
『……わからないの?』
心の中で呟くと自然と溜息が出る。
「えっ。ねぇ家康。私何処か悪いの?」
心配なのか目元が潤んでくるなおにゆっくりと声をかける。
「…どこも悪くない。まだ、少し疲れてるだけだと思うから…今日は早めに寝な…。疲労なら薬もいらないから…」
家康はなおの手を取り、立たせると部屋へと向かう。
「秋野を呼んでくるから…座ってて」
部屋に着くとなおを座らせ、家康は秋野の元へ向かった。
「…こんなの…どう報告しろって言うんだよ…」
秋野を呼びに行きながら、家康は1人頭を抱えていた。