• テキストサイズ

『イケメン戦国』〜生きる〜

第11章 近づく距離


なお目線

それから暫く信長様は書き物を続けた。

何となく動くことも出来なくて、じっとしていた。
足も少し辛くなって来た時

「墨をすれ」
そう言われて近くに寄ると、黙って墨をする。

『これもお仕事だから、しっかりやらなきゃ…でも、久しぶりだなぁ〜。墨って意外と好きな匂い…』
なんて思いながら墨をする。

「何をにやにやしてる」

「へっ?あっ。すいません」
つい謝ってしまう。

「何でそんなに嬉しそうなのだ」

「あの…墨をするのが久しぶりで懐かしかったのと、墨の匂いが好きで…」
変な人と思われるかな?と思いながらも答える。

「貴様の世では、墨は使わんのか」

「日常では使いません。学校…色々習う所や、書道と言って芸術?芸として習う事はありますが、普段は鉛筆とかボールペンとかで書きます」

「えんぴつ…ぼーるぺん。分からんが…いつもは使わんということか?」
信長様の頭の上にはてなマークが飛んでいる。
私は思わず笑いそうなのを堪えて、話を続ける。

「はい。私は10年以上ぶりに墨をすりました」

「そうか…」
そう言ったのを機に信長様は文机へと目をやり、書簡を片付けていった。

…………………………………………………………………

『眠くなってきた』
もうどれくらい時間が経ったか分からない。

途中で昼餉が来て。
一度帰りたいと申し出たけれど、信長様はここにいるように告げる。

『墨をする以外の事やってないから…』
必死に意識を保とうとするけれど、瞼は容赦なく目を塞ごうとする。

何度かカクカクと頭が下がる。
その度に、必死で目を開けて…でも気がつけば私の意識はなくなっていた。
/ 247ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp