第11章 近づく距離
なお目線
「本当にごめんなさい」
次の日、朝餉の広間に揃ったみんなに頭を下げた。
「なお顔上げろ。今度は考えて呑むんだぞ」
秀兄は頭をいつもの様に撫でてくれる。
「うん。秀兄ごめんね」
「酒の失敗くらい、秀吉や政宗の方が多いだろう。くくっ。俺は面白かったから別にかまわんぞ。また、呑ませてやろう」
「うっ。もう結構です」
光秀さんは楽しそうに言う。
「俺の失敗はお前のせいだろ光秀。呑めね〜の分かってて、呑ませるから…まぁ、そういうことだから、そんなに気にすんな!」
「うん。ありがとう政宗」
政宗はいつものように笑ってくれる。
「…次は薬用意しないからね…」
「家康。本当にごめんね。気をつけます」
本当に面倒くさそうに言う家康に、改めて頭を下げる。
「家康様は前日の夜に薬を作っておられましたよ。なお様がご心配だったのですよ」
三成くんはいつもの様ににこにこと笑顔でそう言ってくれる。
「…余計なこと言うな。三成」
「家康。本当にありがとう」
私は改めてお礼を言った。
「…別に…」
「私はなお様の歌を聴けたので、それで充分です。本当に天女が舞い降りたのかと思いました」
「それは…言わないで…恥ずかしいから」
「また是非聴かせてくださいね」
「う、うん」
キラキラスマイルで言う三成くんに、私は頷くしかなかった。
「貴様ら、何をしている」
話をしていると、信長様が広間に現れた。
「2日間、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした」
上座に座った信長様に、頭を下げた。
「身体はもういいのか」
「はい。もう、大丈夫です」
私は顔を上げて答える。
「では、早速今日から働いてもらう。朝餉が終わったら天主に来い」
ニヤリと笑いながら告げられる。
「はい」
「ではもうよい。朝餉が冷める」
その声でいつもの時間が始まった。