第10章 解き放たれる心
第三者目線
『いったい何処に行こうと…』
信長はなおの後ろをゆっくりと歩く。
「あった〜♪」
なおの目線を追って目をやると、そこには奇妙なものがある。
「ブランコ〜♪」
なおは板の上に座ると両側に付けられた紐に手を手に取り、足を大きく蹴り出した。
「♪ぶ〜らんこ、ぶ〜らんこ♪」
楽しそうに歌いながらグングンと漕いでいく。
信長はその様子を近くの縁側に座り暫し眺める事にした。
『…彼奴は本当に見てて飽きんな』
なおはブランコを漕ぎながら、歌を歌い空を眺めている。
暫く大きく漕いでいたが、ふと、その揺れが小さくなり止まる。
「…ふっ…くっ…」
『どうした?』
信長はそっと立ち上がると、なおの背後から顔を覗き込む。
「…どうした」
声をかけると、ゆるりとなおは顔を上げる。
その顔は涙に濡れていた。
「…のぶなが…さま、わたし…わたし…そらに、いき…たい」
なおはそう言うと、ゆるりと立ち上がり信長の腰元に腕を回し抱きついてきた。
「なお…何故そう願う」
「そらには…おとう…さん、お…かあさん。いる…から、このまま…いけたら、いいのに…」
そう言ってまた、しくしくと泣きだす。
「…ぶらんことやらじゃ届かんな…」
信長はなおの頭をそっと撫でる。
「いきたい…けど…いきたくない…。けど、あい…たい」
「…くっ」
その切ない想いに信長は、なおを強く抱きしめる。
「のぶな…がさま?」
「いくな…」
信長はなおをそっと身体から離すと、顎を持ち上げ上を向かせる。
涙に濡れた瞼をそっと指でなぞる。
その指に合わせる様になおは目を閉じる。
信長はその指でそっとなおの唇をなぞると、その唇に引き寄せられる様に自らの唇を合わせそうになる。
「くっ…貴様はもう寝ろ」
信長はなおを横抱きにすると、歩き始める。
「…う〜ん」
目を閉じたままのなおは、信長に全てを預け微睡みに落ちていく。
なおの部屋に着くと、用意してあった褥に起こさぬ様そっと降ろす。
「貴様は…何なんだ。何故俺にこんな気持ちを教える」
なおに対する気持ちに気づいてしまった信長は、ゆっくりと唇を瞼に寄せた。