第10章 解き放たれる心
第三者目線
その歌声
その立ち姿
不思議な旋律
宴の騒めきは一瞬に消え、月がその姿を明るく、艶やかに映しだす。
「ララ〜♪…うん?みんなどうしたの?」
鼻歌を歌う様に無意識に歌っていたなおは、急に静かになった周囲に驚き声をかける。
「なお!いい歌だなぁ〜聞き惚れたぞ!」
「なお様は歌声まで天女様の様ですね!」
「…まぁ。うん。上手なんじゃない?」
「ふっ。その声別のところで聴きたいものだな」
「あぁ。同感だ。さぞいい声で鳴きそうだ」
「光秀。政宗。お前らはそれしか頭にないのか?」
急にざわざわと宴の騒めきが戻る。
がやがやとしゃべり始めた武将たちが気付かぬうちに、なおがふらふらと歩き始める。
秋野がそれに気付き立ち上がろうとする。
その動きを制する様に信長は立ち上がる。
「俺が行こう」
秋野は何の反論もせず、居住まいを正し頭を下げた。
「心配せずとも、貴様の大事な娘、悪い様にはせぬ」
信長はそう呟くと、なおの後を追った。