第9章 穏やかな日々
第三者目線
今日からなおが朝餉に来るとあって、武将たちはみんな浮き足だっていた。
秀吉はそわそわと襖の前を行ったり来たりしている。
三成は手伝いを申し出ては、どうなるかわかっている女中達にやんわりとお断りを受けている。
政宗は朝1番に起き、なおの為にと好物ばかりを作っている。
家康も政宗に負けない程の早起きをし、薬の調合に勤しんでいた。
光秀は座ってはいるものの、今日はどうやってからかおうかと1人考えていた。
それぞれに、寝ているなおを退屈させない様にと、仕事の合間を縫って顔を出していた。
あの戦を機に少しずつ笑顔が増え、怯えた様子も少なくなり、会話も弾む様になった。
それを皆嬉しくおもい、それと共に二度とあの様な事のない様に…とそれぞれが心に誓う。
仕事はあったものの、お茶を囲むこともなおの為と、皆席を立つことはなかった。
そんな中、なおが突然言いだしたことに、皆は驚いていた。
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「私、お仕事がしたいの」
秀吉は、その言葉に何か欲しいものでもあるのか?と思ったが、そうではないと言うなおに、感心していた。
『暫く前までは、生きる気力さえなかったのにな…。』
そう思い横を見る。
少し緊張した様な、でも嬉しそうな様子がみれるなおの顔を微笑ましく思う。
『俺がこの時代ではない場所に、突然行ったとして…こんなにも強く生きられるだろうか?』
そう考えると、自分には難しく感じた。
『もっと穏やかに過ごせる様に助けてやらなきゃな。』
「秀兄?どうしたの?」
なおの声に、なおを見つめていた事を思い出す。
「いや、すまんな。考え事をしていた」
「忙しいのに…ごめんね」
なおは何を勘違いしたのか謝って来る。
「大丈夫だ。大した事じゃない。それより、俺は【ご】のつく言葉より、【あ】のつく言葉が好きだと教えたろ?」
「あっ。ありがとう」
そう言ってなおは、ふわりと笑う。
「それでいい。さあ行くか?」
秀吉はなおの頭にそっと手を置くと、天主への階段に脚をかけた。