第8章 再会
なお目線
「なお様」
佐助兄が居なくなってすぐ、秋野が声をかけ部屋へ入って来た。
『佐助兄。来るのわかってたのかな?』
秋野の顔を見上げる。
「…なお様」
秋野が駆け寄って、私をそっと抱きしめる。
「どうなさったのですか?また、痛みましたか?それとも…」
そう声をかけられて、泣いていたのを思い出した。
「あっ。ごめんなさい。少し淋しくなっちゃって…こんなに1人でいることなかったから…」
私は半分本当。半分嘘をついた。
「大丈夫ですよ。どこか痛みますか?」
秋野は優しく聞いてくれる。
「痛みは変わらないから、大丈夫」
罪悪感を抱えながら、秋野の胸に顔を埋める。
『言うわけにはいかないから…ごめんね』
心の中で謝った。
「ごめんなさい。これじゃあ、秋野が安心して仕事出来なくなっちゃうね」
私は顔を上げると微笑んだ。
秋野もつられるように笑ってくれた。
「時折様子を見に来ますから、辛い時はおっしゃってくださいね」
「はい」
素直に頷いた。
秋野はそっと身体を離すと、ゆっくりと身体を横たえてくれた。
「しばらくここにおりますから、少しお休みになってください。夕刻には家康様が傷を見に来られるとおっしゃっていましたので…」
「わかった。少しぼーっとするし寝てるね」
私は静かに目を閉じる。
『本当は眠れない。』
目は閉じたが一向に眠気は来ない。
佐助兄との再会で気分が昂ぶっているのを感じた。
『忍びになったって、そんなに簡単になれるものじゃないよね。』
四年間待っててくれたのだと思う。
佐助兄の頭の良さなら、きっと来ることもそして帰ることも、簡単だったはずなのに、私を探してくれていた。
そこで思い当たる。
『私も…もしかして帰れるのかな?』
そうおもいながら、微睡みの中に落ちていった。