第7章 ぬくもり
なお目線
不意に頭の上から音がして、見上げようとした瞬間。
背後に人の気配がして、口を塞がれる。
「んんっ」
恐怖が身体を支配し、声を上げられず身体が硬直する。
「なおちゃん」
『えっ?』
聞き覚えのあるその声に、心臓が跳ね、ドキドキと鼓動が速くなる。
「手を離すから、静かにしてくれるかな?誰か来るとヤバイんだ」
私は、コクコクと頷く。
そっと手が離されて、その人は私の目の前に姿を現した。
「佐助兄…」
一言呟くと、涙がポロポロと流れだし、目の前の姿が霞んでいく。
「やっと逢えた」
佐助兄は、私をそっと抱きしめる。
もう2度と手に入らないと思っていたぬくもり。
それが、
今
私の手の中にある
信じられない想いと
それが
本当だと想える暖かさ
そのぬくもりに
私の涙は
暫く止まらなかった