第7章 ぬくもり
なお目線
「おい!また、遅いと思ったら、何やってんだ!」
「秀兄」
私は思わぬ救世主に口元を綻ばせる。
「あーあ。邪魔が入っちまったな。仕方ねー。また、後でな!」
私の頭をまた撫でてると、政宗は出ていく。
「おい!こら待て、廊下は走るな!」
秀兄は追いかけようとするけど、政宗は脱兎の如く逃げていく。
「はぁ、全く童じゃないんだから…」
「ふふっ」
「笑い事じゃないぞ。なお」
「だって、秀兄っ。ふふっ。みんなのお兄ちゃんみたいだね」
「あんな兄弟は要らんがな」
秀兄は、そう言いながらも嬉しそうな表情を見せる。
「笑えるくらい元気になったんだな」
「うん。まだ少し怠さと、傷は痛むけど、大丈夫」
「それは、大丈夫とは言わないんだぞ。無理はするな…」
頭を撫でてくれながら、少し眉根を寄せている。
「飯は秋野に食べさせてもらえ。無理はするなよ」
そう言いながら、秀兄は外へと出て行った。
「政宗様も秀吉様も、過保護ですね」
秋野は笑いながら私を見つめる。
「でも、秋野はもっと過保護だよ」
「私は良いのです。なお様のお母さんですから」
胸を張っていう秋野が可笑しくて、2人で暫く笑いあった。
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秋野は私にご飯を食べさせてくれると、仕事があるからと出て行った。
不意に静かになった部屋が心細く感じる。
『こんなに長い間、穏やかに過ごす事はなかったからかな…』
元いた場所も、穏やかではあった。
でも、いつも不安が胸の隙間に入り込んでいて…。
『今の方が男の人が一杯なのにな』
みんな暖かくて、優しくて。
ここが戦国時代だという事、忘れてしまいそうで…。
『でも…』
今でも、戦場のあの風景は夢に見る。
それを思うと、身震いするほど怖くなる。
『けどきっと、あの男に会うよりは穏やかでいられる』
もうきっと
いや2度と
会わないとは思うのに
また
不安が胸の隙間に入り込んできそうだった。
「ガタッ」
「?」