第7章 ぬくもり
第三者目線目線
「つっ…」
なおは痛みに目を覚ます。
『熱もまた出てきたのかな?身体が熱くて、苦しい』
そう思っていると、額にひんやりと冷たさを感じ、その心地よさにゆるゆると目を開ける。
「起こしてしまったか?」
その声に驚いて目を見開くと
そこには
信長がいた。
「な、んで…」
「貴様に命を2度も救われた。その礼だ」
信長は素っ気なくそう告げる。
「わた、し、だいじょ…ぶ、つっ!」
言った言葉に反する様に、肩に痛みが走る。
「まだ、寝ていろ。夜明けまでまだ遠い。どうせ俺は長くは眠れん、貴様が気にする事ではない」
そう言うと、信長はなおの瞼にそっと手が置いた。
『暖かい手』
熱が出て火照っている筈なのに、その手はとても暖かく感じ、そのぬくもりに身を委ねる様に、なおはまた微睡みに落ちていった。
…………………………………………………
「寝たか…」
少し苦しそうではあるが規則的な寝息を感じ、信長はそっと手を離すと、そのまま少し火照った頰に手を添える。
『また、熱が出てしまったな…』
信長は、戦後の処理を終えるとまた、夜になおの介抱を続けていた。
「俺の命を救ったのだ。礼はするべきだろう」
戦で疲れているからと心配する秀吉を説き伏せ、毎夜通っていた。
普段であれば、褒美を取らせそれで終わるはずの事。
「命を救われた礼か…」
そう呟き信長は自称気味に笑った。
「この俺が、女子如きになんてザマだ」
吐き捨てる様に呟くが、その言葉に力はない。
「何故、俺を庇った」
まだ、死ぬ気ならば分かる。
だが、なおは【死にたくない】と、そうハッキリ口にしていた。
「何故…」
信長の言葉は静かに、何もなかったかのように、闇にとけた。