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『イケメン戦国』〜生きる〜

第6章 本心


第三者目線

それから暫くすると、宴が始まった。

「なお様に是非ご挨拶を…」
とたくさんの人が押し寄せる。

秀吉や三成が意識して距離を取ってくれてはいるが、なおは気を抜けば引きつりそうな笑顔が辛く感じていた。

「姫。こちらに来て酌をしろ」
その声は信長だった。

なおは無意識に身体がすくむ。

「大丈夫だ。俺も一緒に行くから…」
秀吉はその様子をみて、そっと手を引き信長の隣へと歩を進める。

なおは徳利を手に取る。
距離の近さを意識しないようにすればするほど、手はカタカタと震える。
それでもなんとか、酌をする事が出来た。

「貴様は飲まんのか?」

「…飲んだ事がないので…」

「何故だ」

「私の時代は、お酒を飲める年齢が決まっていて、私はその年令になったばかりなんです」

「そうか…では今日呑め」
信長の言葉に少し考える。

「…怖いので無理です」

「何が怖い」

「どうなるかわからないから…意識がなくなったら……」

『何を、誰にされても、わからない』
その恐怖が身を襲う。

「お屋形様。そろそろなおを休ませたいのですが…」
秀吉はなおの様子を見て、信長に進言する。

「ふんっ。つまらん。
今日は良かろう」
信長の言葉に安心するのもつかの間。

「祝いの宴では、飲んでもらうぞ。
今日は許してやるのだ。
今度は無理とは言わさんぞ」
信長はなおを鋭い眼で見、ニヤリと笑う。

「ですが…」

「俺に逆らうか?」

「…申し訳ありません」
秀吉はこれ以上は言う事が出来なかった。

「もういい、下がれ」
信長の言葉に、秀吉はなおを立たせると

「なおを部屋まで送ってまいります」
そう告げてその場を離れた。

…………………………………………………

「明日は早い。すぐ寝るんだぞ」
秀吉はなおにそう声をかけ、部屋を出た。

いつもは静かな部屋。
今日は遠くで喧騒が聞こえる。

「お酒飲んだ方が眠れたのかな」
さっきの信長との会話を思い出し、なおは呟いた。
明日からの事を考えると、恐怖がじわじわと心を蝕む。

「眠れないかもしれないけど、もう布団に入ろう」
そう呟きなおは眠れない夜の扉を開けた。






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