第6章 本心
第三者目線
『なおは遅いな…呼びに行くか?』
秀吉は秋野に伝言をし、広間での宴の準備を終え、なおを待っていた。
『もう直ぐお屋形様も来られるし、呼びに行くか』
そう思い立ち上がると入口へと目を向ける。
「遅くなりました」
襖が開き秋野の姿が目に映る。
その後ろに、秀吉が贈った着物を着て
髪を高めに1つで結び
恥ずかしそうに頬を染めたなおの姿が見えた。
「おぉ〜。なお今日も可愛いな〜」
そう言って歩み寄り、頭に手を置いた。
なおはその言葉に暫し固まると、眩しい程の微笑みを秀吉に向けると小さく呟く。
「秀兄。ありがとう」
その微笑みに今度は秀吉が固まる。
「おい!またそんな所で固まってんのかよ。飯食うぞ。せっかく作ったのに冷めちまうだろ」
後ろからいつの間にか姿を現した政宗は、2人の間に入り込もうとする。
「秀兄…」
なおは思わず秀吉の袖口を掴み、助けを求めるように名前を呼ぶ。
秀吉はなおを背後に隠すと
「政宗。なおを驚かすな」
「へいへい。わかったよ。もう、構いまくってんのかよ」
政宗はブツブツ言いながらも、ニカッと笑い席に戻っていった。
「なお。ここの奴らはみんないい奴ばっかりだ。少しずつ慣れろよ」
秀吉はそう言うと、なおの手をそっと引いて、席へと連れていく。
「本当にすまないが、お前は織田家ゆかりの姫ということになっている。今日は秋野も忙しい。俺と三成の間で我慢してくれ」
秀吉は説明をしながら席へと座らせる。
「少し窮屈かもしれないが、時期をみて下がらせてやるから、少し頑張れよ」
秀吉はなおの頭を撫でながら、笑った。
「はい」
なおはその笑いにつられるように、微笑み、小さく返事を返した。