第4章 一歩前へ
なお目線
遠くで誰かが話す声が聞こえて、少しずつ頭が覚醒していく。
「何故!何故その様な事を…」
秋野の大きな声に身体がビクリと跳ね。
目が覚めてしまった。
『秋野?どうしたんだろう?」
私は、そっと身体を起こすと声のする方へと近寄る。
声を掛けようと、襖に手を掛けた時。
「『幸運を呼ぶ女』だから、などと言う理由で今のなお様を戦場には連れて行けません!2日前にあんな事があったばかりで何故!」
その声に思わず後退り、襖から手が離れる。
『えっ?!戦に行くの?
2日前?何かあった?』
一気に疑問が頭をめぐるが、考える間もなく秀吉さんの声がする。
「…秋野。これは決定事項だ。お屋形様の事を分かっているお前には、どうしようもない事だとわかるだろう?」
「ですが!」
秋野の声を吸い込むように沈黙が訪れた。
「信長様と話をさせてください。」
秋野の静かな、でも凛とした声が聞こえる。
「それは…無理だ」
「ですが…」
私の事を話しているのに、襖の裏にいる事がなんだか歯痒くて、悲しくて、歩を前に進め襖に手をかける。
「秋野」
「「なお(様)」」
私の名前を呼んだまま、何かを探る様に2人の眼が私を見る。
『秀吉さんはきっと、行かせたくないけど信長様には逆らえない。
だから、説得しに来たんだよね…。』
『秋野は私を傷つけるのが嫌で、私に何も聞かせない内に辞めさせようとしてくれているんだよね…。』
2人の心配そうな眼差しに
愛おしいと思ってくれている事が良くわかった
『けど……このままじゃダメだよね』
私は
自分がどうしたいのか?
わからない。
でも、
どうするにしても
自分自身で
決めなきゃ行けないんだ
もう
逃げるのは
やめよう
そう
強く
思った
「私も信長様と話がしたい」
私は今までで1番力の入った声で2人に告げた。