第3章 輪の中へ
第三者目線
朝餉を終え部屋に入るとなおはため息をついていた。
秋野はお茶の支度をしながら、その様子を見ていた。
『やはり、少し急ぎすぎたかしら…』
秀吉に朝餉を一緒にと、頼んだのは秋野だった。
ここの武将の事は、秋野は知り過ぎるほど知っていた。
なおの嫌がる事はしないと、思っていた。
そして、その予想は外れてはない。
むしろ、それ以上に優しくなおに接してくれていた。
『そうでなければ、なお様のあの笑顔はありませんものね。その後の沈黙は、皆様に気をつけて頂かなければ……』
秋野はそう心の中で呟くと、何かを考え険しい顔をするなおに声をかける。
「男の方は怖いですか?」
と、尋ねるとなおは喋り始めた。
その話が【佐助兄】という人に及んだ時、なおは泣き出してしまった。
『久しぶりに…やはり無理をさせてしまったかしら』
なおを今までの様に抱きしめながら、心配と後悔をしていた。
「いやーーーーッ!!!!」
腕の中で突然なおが叫んだ。
「なお様!」
秋野はすぐに身を離し顔を見る。
真っ青な顔色。
震える身体。
虚ろな目。
「なおさま?」
秋野は思わず息をのむ。
なおを見つめる秋野の前で、なおの目は少しづつ閉じ、閉じきった瞬間に秋野の身体に身を預けるようになおは脱力した。
その重みに秋野は我に返る。
「なお様!なお様!」
なおをかき抱き、秋野はその名を何度も叫んだ。