第3章 輪の中へ
第三者目線
「なお様!なお様!」
秋野が声をかけていると
バタバタと複数の足音が聞こえる。
「どうした!」
そこには、秀吉を含め武将達の姿があった。
「…代わって…」
家康は、秋野の手からなおを受け取ると、褥に運び身体の様子を見る。
秀吉は、呆然としている秋野に声をかける。
何度目かの声かけで、秋野の目に力が入るのが分かった。
「申し訳ありません!」
秋野は土下座をする。
「頭を上げろ。秋野。お前が何かした訳ではないのは分かってる」
秀吉は秋野の肩に手を置いて、声をかける。
「いえ。私が事を急がなければ……。」
「そんな事はない。秋野がなおに笑みを与えたんだろ…俺たちでは無理な事をやってるんだ。」
秀吉の言葉を有難いと思いながらも、なおを傷つけたとの思いが拭いきれない。
「私の任を解いてください。」
秋野は顔を上げると秀吉に訴える。
「そんな事。言ったって解くわけないでしょ…なおの事を良く分かってるのは、秋野しかいないし、これ以上あの傷の事を広めるのは得策とは思えないしね。…なお脈は少し早いけど、それ以外は大丈夫だから…」
なおの様子を見ていた家康が戻ってきてそう告げる。
「秋野。面倒を見てやってくれ。目を覚ました時にお前が居ないと、なおは哀しむ。」
「…わかりました」
色々な言葉を飲み込み、秋野は頭を下げた。