第3章 輪の中へ
なお目線
「……ふぅっ」
部屋に着くと大きなため息がでる。
『思った以上に緊張してた。けど!お礼言えたし、良かった』
私は緊張と同時に満足感もあった。
『でも、やっぱり……』
「男の方は怖いですか?」
私の気持ちを代弁するかの様に、秋野が尋ねてくる。
「……はい。私、ずっとずっと避けた来たし、避けて来れたから…。小さい子は平気なんです。小さい子の面倒をみる仕事にもついてたし…でも大人は怖い」
そう答えて1人の人を思い出す。
「佐助兄」
つい声に出し呟いた。
「兄様ですか?」
「いえ、血は繋がってなくて、幼馴染?小さな頃から一緒に過ごしていた人です。佐助兄だけは、大人だけど大丈夫でした。……今、何してるのかな…し、んぱいしてるっ……」
はらはらと涙が溢れてくる。
『忘れてたなんて、心配してるよね。ごめん。佐助兄……』
私はまた秋野の胸に顔を埋め泣いた。
『何も出来ないで、人に心配ばかりかけて、身体も…やっぱり……いないほうがいいのかな…」
少し上に向いた気持ちは、あっという間に堕ちていく。
堕ちた気持ちにつけ込むように、あの男の顔が浮かぶ。
「いやーーーーッ!!!!」
触れられている訳ではないのに、あの時の感覚が蘇り、全身が総毛立ち、遠くに自分の叫び声を聞いた。