第3章 輪の中へ
第三者目線
しばらくの間場が静まり返る。
なおはあまりの沈黙に不安になる。
『何かいけない事言ったかな……泣きそう』
なおは自分で気付いていなかったが、みんなにお礼を言った後のその顔には、微かな笑みが溢れていた。
『可愛いじゃね〜か』
政宗は思う。
『……その顔ずるい…』
家康は思う。
『愛らしい……』
秀吉は思う。
『ほぅ。なかなかいい顔をする』
光秀は思う。
『まるで天女の様ですね』
三成は思う。
『やはり、此奴は…』
信長は思う。
それぞれに、なおの顔に見とれていた。
「皆様。なお様を泣かせたいのですか?」
秋野の声が響く。
皆は一斉に
「「「そんな事は」」」
声を上げる。
「なお様。大丈夫です。皆様、お返事を忘れていた様ですよ。何も悪い事は言ってませんから、その様なお顔をされないでも大丈夫です。」
秋野はなおの手をそっと握り、優しい声で言った。
その言葉に安堵し、再びなおの顔に笑みがこぼれる。
『『『その顔……』』』
なおは自分では気がつかないうちに、全ての武将の心を捉えていた。
「秋野」
上座から声がかかる。
「はい。何でございましょう」
秋野はその声の主。信長を見る。
「もう其奴も疲れたであろう。一緒に下がれ」
「はい」
返事をするとなおを見て
「なお様。お部屋に戻りましょう」
声をかけ、ゆっくりとなおを立たせた。
「それでは、お先に失礼致します」
秋野は頭を下げると、倣う用になおも頭を下げる。
「後で使いをやる。天主に其奴を連れてこい」
信長はそう告げる。
秋野となおは、返事をしその場を後にした。