第3章 輪の中へ
なお目線
「おいしい」
小さく呟く。
「そうか!おいしいか?!」
大きな声が響く。
一瞬、身体が震えてしまう。
「すまん。びっくりさせてしまったな。」
政宗さんが少し小さな声で謝ってくれる。
「ほら、見ろ。こんなにおいしいって言ってくれてんのに!唐辛子かけ過ぎだ家康!光秀も混ぜるなよ!」
そのあとの言葉に、私は顔を上げる。
そこには、真っ赤なご飯を食べてる家康さんと、もう、何がどうなってるのかわからない物体?を食べてる光秀さんが目に入る。
びっくりしていると
「あの御二方はいつもそうなのですよ」
と秋野が小さな声で教えてくれる。
『おいしいのかな?』
と不思議に思い視線をもどすと、少し離れた目の前に政宗さんが来てきた。
「ここら辺なら、大丈夫か?」
政宗さんは少し遠慮がちに聞いてくれる。
「……大丈夫です。」
気を使ってもらってる事が少し申し訳なく、返事が遅れた。
それを怖いからと勘違いしたのか、少し後ろに下がってくれる。
そして、突然政宗さんが頭を下げた。
「すまん!」
「えっ。あの……」
「手を離してしまって、本当にすまない。痛かっただろう。本当にすまない。ずっと謝りたかった」
「いえ。あの。私が悪いから……ごめんなさい。秋野から聞きました。夜通し走ってここに連れてきてくれたって…。私の方こそ本当にごめんなさい……ありがとうございます」
私は、声を振り絞ってそう言った。
「そんな事大した事ない。許して貰えて良かった。元気になって良かったな」
政宗さんは、顔を上げ笑顔で話してくれた。
私は意を決してみんなの顔を見ると
「家康さんも傷を治してくれてありがとうございます。」
「秀吉さんも政宗さんと一緒に私を運んでくれてありがとうございます」
「光秀さんも薬になる薬草を探してくれてありがとうございます」
「三成さんも出会った時、優しくしてくれてありがとうございます」
「そして、信長様。私をここに置いてくれて、着物も頂いてありがとうございます。」
そう一気に言い切った。