第3章 輪の中へ
なお目線
「さぁ、ここだぞ」
秋野に手を引かれ広間へと来た。
身体が震える。
何をされる訳ではない事は分かってる。
『でも……怖い』
男の人といる事は、私が1番避けてきたこと。
けど、ここには男の人しかいない。
「なお様。秋野がお側におりますから」
秋野はふわっと微笑んで手をしっかりと握ってくれた。
「それに、なお様。お礼を言わなければならない方々もいらっしゃいます。傷を癒してくれた家康様。食事を作ってくれた政宗様。この場に私を置いてくださる秀吉様。そして、ここに住まわせてくれた信長様。皆さんいらっしゃいますから、ね」
「うん。分かってる」
小さく返事を返す。
『分かってるけど…』
また、下を向いてしまった私の頭にそっと手がのる。
その、暖かさが誰かに似ていて、何故か安心感を感じる。
でも…
『あれ。秋野の手はここにあるのに誰?』
ふと上を見ると
「きゃっ!」
私は頭を振るように秋野の後ろにまた隠れる。
「あっ。すまん……つい…」
そこには申し訳なさそうな顔をした秀吉さんがいた。
「秀吉様!なお様を怖がらせてないでください!」
秋野は私を抱きしめながら、秀吉さんに怒ったように言う。
「秋野。大丈夫。少しびっくりしただけで、そんなに怖くはなかったよ。」
私はそう伝える。本当に、怖さはなかったから。
怒られてる秀吉さんに悪く思う。
「本当にすまん。」
そう言うと秀吉さんは私に頭を下げる。
「愛らしくてな。つい。」
その言葉に、私は顔が赤くなるのが分かる。
その顔を隠したくて、顔を秋野の胸に埋めた。
「秀吉様!」
「あ〜。本当にすまん……」
また謝る秀吉さんの声が聞こえた直後。
「おい!いつまでそうやってんだ!」
目の前の襖が開いて、政宗さんが顔を出す。
「信長様もお待ちだぞ。」
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それから、秀吉さんと秋野は信長様に遅れた事を詫び、私も後ろでそっと頭を下げた。
「まぁ良い。入れ」
秀吉さんは返事をすると私達を席に案内してくれる。
「本当はこんな端ではないんだが、ここが落ち着くだろう?」
と末席に座らせてくれた。
隣には秋野がいる。
私は少し安心して食事を始めた。