第34章 不安
なお目線
野原に着いて暫くすると雨が降り始めた。
烟る様な雨が少しずつ視界を奪い、野原だけがこの世から隔離され、もう誰とも逢えないかもしれない…とあり得もしない不安が過ぎる。
『私…何してるんだろう』
近くにあった木の下。
お腹も少しきつくて…座り込む。
大きな木の下。
少し守られている様な気がして…ふっと息を吐く。
「やっぱり…逃げることしか出来ないのかな」
何かに向き合うことは、怖い。
「信長様はきっと、答えてくれるはずなのに…。嘘なんかつかずに…向き合ってくれるのに…」
分かってる。
私が…
私が…勝手に怖がっているだけなんだから…。
信長様も、他のみんなも、『大丈夫』だと、『甘えていい』のだといつも伝えてくれている。
逃げていたって、どうにもならない。
堂々巡りの考えが、頭をくるくると回っていく。
あと何回、これを繰り返せば…私は強くなれるんだろう?
「のぞみも産まれるのに…こんなお母さんでいいのかな?」
こんな時に限って、帰ってこないのぞみの返事に頭を下げて蹲る。
ぽたぽたと涙があふれて…こうして泣くことしかできない自分が情けないと思うと、ますます涙が止まらなくなる。
『こんなに悲しい思いをするなら、こんな所に来なければよかったのに…逢いたい…信長様に逢いたい』
「なお…」
小さく聞こえた声に、顔を上げる。
「信長…さま?」