第34章 不安
第三者目線
「あら?なおは?」
湯殿から戻って来た沙耶は、そこに居た信長達に聞いた。
「一緒ではないのか?」
「はい。先に上がると随分前に…」
信長と秋野が話していると、廊下から女将がなお姫様は居ないか?と声がかかる。
「なお姫様が、お出掛けなさると仰るので、お付きのものを…と連れてくる間においでにならなくなり…申し訳ございません」
女将は深々と頭を下げる。
「何処に出掛けると?」
秋野が声をかける。
「何処か良い所は?と聞かれましたので、近くに野原があるとお伝えしたのですが…。少し様子がおかしかったので…連れのものをと思いまして…」
女将は申し訳なさそうに告げる。
「…野原」
信長はそう呟くと、立ち上がる。
「信長様、如何されたのですか?」
「なおが見る夢だ。野原をかけているのだと言っていた。そして、雷にうたれると…」
小さく呟いた言葉に、皆は息をのむ。
「雨が…」
開け放たれた襖から見えた外の景色が、いつのまにか暗く雨が落ちてくる。
「なお…」
信長は名を呟くと、その場を駆け出した。
「…謙信様。今まで何を話しておられたのですか?」
沙耶は謙信を向き直ると、そう声をかけた。
……………………………………
「なお様がその話を聞いていたら…」
沙耶と秋野は謙信から話を聞いて、なおの心情を慮る。
「そういえば、佐助は?」
「佐助なら、少し前に春日山へと文を持たせた」
「なおの夢では、なお、信長様、佐助の3人が揃っていたと…春日山は反対の方向。会わなければ…大丈夫」
そう言いながらも、沙耶の心には一抹の不安が過ぎる。
「兎に角、私は秀吉様と家康様にお伝えして参ります」
秋野はそう言うと2人の元へと走った。
「謙信様。私達も…」
沙耶がそう言うと、謙信は立ち上がり沙耶の手をとった。