第33章 諦め
なお目線
「幸せを願うのも、きっと同じことです。
同じ様に信じれば良いのですよ」
秋野はそう言って私の手をキュッと握ってくれる。
「…信じる」
「なおはきっと、嫌な事がありすぎて諦める癖がついてしまったのね。
でも、信長様を、のぞみを、秋野を、ほかのみんなを諦められる?」
「… もう、諦めたくないの」
そう呟いて、今までのことを思い出す。
お父さんが居なくなった日から、私はお母さんと一緒に何かをするのを諦めた。
やりたい事もたくさんあったと思う。
言えばやらせてくれる事も分かっていたけど、負担になるのが嫌で諦めた。
あの男が何かする事に抵抗するのは、怖かった。
逃げようと思えば逃げれたのに…あの時にはもう諦める癖がついていた。
そして、生きることを諦めようとした。
諦めることは、とても楽だったんだと思う。
考えなくていい。
我慢しなくていい。
苦しくも辛くもない。
けど、その代わり幸せは遠いものになった気がする。