第2章 心を閉ざして
第三者目線
秋野は縁側に座っているなおにお茶を出す。
あれから、声が枯れるまで泣き続けたなおを抱きしめて、声をかけ続けた。
今まで、しくしくと消え入りそうに泣くなおが、全てをさらけ出せてない事は分かっていた。
「…死にたいとまで願うのですから、無理はないですが…少しは楽になられたのではないでしょうか」
あまりの泣き声に心配し様子を見に来ていた、秀吉や家康にそう告げた。
『少し…お顔も緩んだ様ですね』
お茶を飲む横顔を見ながら、秋野はそう思う。
「…ごめんなさい」
目線を感じたのか、なおが呟く。
「謝らないでください。私は嬉しゅうございます。」
「何で?」
「なお様が私に心を開いてくれたのだと思うと、嬉しくて…」
「………」
黙り込んでしまったなおに、秋野は話しかける。
「私の話を少し聞いて頂けますか?」
なおは黙って頷いた。
「私は子を無くしました。もし、生きていたらなお様と同じ位の年になっていると思います。」
秋野は気持ちを落ち着ける様に一息つく。
「…だから、おこがましいとは思いますが、なお様を自分の娘の様に思っています。そのなお様が悲しい気持ちでいると私も悲しいのです。」
なおを見ると、その目にはまた涙が浮かんでいた。
「申し訳ありません。また、泣かせてしまいましたね」
手で涙を拭うと子どものように、なおは無言で秋野を抱きしめた。
秋野もなおを抱きしめ返し、2人で泣いた。
「ありがとう」
小さな、しかしはっきりとした声でなおは呟く。
それがまた嬉しくて秋野は涙を流す。
しばらく、お互いを温めるように抱きしめ合う。
「お身体が冷えてしまいますね。褥に参りましょう。」
秋野はそう言うと、なおの手をそっと握り部屋へと連れて行く。
「ゆっくりお休みください。なお様が眠るまでお側におります。」
そう声をかけると
「…手を握ってても良いですか?」
なおは尋ねる。
「もちろんです。眠るまで離しませんから、ご安心なされてくださいね。」
そう言うと手をそっと握り頭を撫でる。
なおは、秋野の手を握り返しながら、穏やかな眠りに身を委ねた。