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『イケメン戦国』〜生きる〜

第2章 心を閉ざして


なお目線

『気持ちいい……』
10日以上ぶりのお湯に浸かって、目を閉じた。

『身体も、髪まで洗ってもらうなんて……迷惑かけどうしだな…』
そう思いながら、目を開け秋野さんを見る。

桶を片付けている秋野さんと目が合う。

「どうかなされましたか?」
優しく聞いてくれた。

「…何も…ないです…。」
そう言うと、ふいと顔を背けてしまった。
『ありがとうって言いたかったのにな…』

秋野さんは、何も言わず片付けを始める。
『…何なのその態度って言われてもおかしくないのに…優しい…また、泣きそう…泣いたら迷惑かけちゃう』
そう思って顔を少し湯船に潜らせる。


『…何か出来ることないかなぁ……あっ。あった。』
思い当たった事をやりたいと思うけれど、そんな事されてもって気持ちと、恥ずかしさも相まって思考が止まって、気付いたら息も止まっていた。

「はぁ。」

「なお様。大丈夫ですか?」

思ったより深いため息をついてしまった様で、秋野さんは私のそばに来てくれた。

『…何やってるんだろう』
そう思うとまた泣けて来て、湯に濡れるのも厭わず私を抱きしめてくれる秋野さんに、また迷惑をかけてしまった。

……………………………………………………………

お風呂から上がると、薬をつけてくれた。

「お身体もすっかりお綺麗になりましたね」
秋野さんは薬を塗りながら、笑顔で言ってくれる。

「……汚いよ」

思わず呟いた。

気がつくとまた秋野さんの腕の中に居て。
私の頭を撫でてくれる。

「なお様。誰が何を言おうとお綺麗ですよ。なお様に何があったのかは私には分かりません。でも、お身体もお心もとてもお綺麗です。」
秋野さんはそう力強く言ってくれる。

その言葉に、今まで堪えていたものが溢れてくるのを止められなかった。
「つっ…うっ……うわぁ〜〜あ〜〜」
私は、足から崩れ落ち泣き叫んだ。
こんなに大声で泣いたのはいつぶりだろう。
悲しくて、悲しくて仕方ないのに、そう冷静に思う私もいて、でも涙はなかなか止まらなかった。

秋野さんはそんな私を力強く抱きしめてくれて、何度も頭を撫でて
「大丈夫ですよ」
と優しく声をかけ続けてくれていた。
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