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『イケメン戦国』〜生きる〜

第32章 繋ぐ


なお目線

昨日の騒がしさが嘘の様に、のんびりとした雰囲気が広間にあった。
私と信長様も皆と一緒に座って、色々な話をして笑い合う。
もちろん、お母さんも謙信様も…そして佐助兄は勿論、武田信玄様と真田幸村様の姿もあった。

お母さんが説得する迄もなく、信玄様は信長様にいくつかの条件を出し、それを飲む形で同盟を結んだと聞かされた。
それについては、教えてくれなかったけど…皆が連日話合いをしていたのを知ってる。

『それくらい…難しい事だったんだよね』
詳しくはわからないけど、敵同士が仲良くなるなんて難しい事だと言う事くらい、歴史をよく知らない私でもわかる。

それをさせた事が、いい事なのか?悪い事なのか?そんなこともわからない自分が…少し情けない。

「なお…なお!」

「えっ?あっ。ごめんなさい。なあに?秀兄」
考え込んでた私は、呼ばれてる事に気がつかなかった。

「身体が辛いのか?ぼーっとして」

「大丈夫…少し考え事してただけだから」
私が答えると、いつもの様に頭に手を置いて微笑んでくれる。

「そうか…何か心配事でもあるのか?」

「ううん。考えても仕方ない事だと思うから…」
私は終わったことを蒸し返すのも…と言い淀む。

「気になることは聞いても良いんだぞ」
少し真面目な顔になった秀兄が、私の顔を覗き込む。

「ううん。大丈夫。ちょっと疲れたから…外に出てもいい?」
秀兄の気をつけろよの声を聞きながら、そっと外に出た。

「うーん!いい天気」
私は少し伸びをして、空気を一杯吸い込んだ。
気持ちは、深呼吸した事で少し落ち着いた。

「のぞみ。ブランコに行こうか」
私はのぞみに声をかけて、ブランコに向かう。

ゆらゆらと揺れ始めると、時折お腹にポコンと振動が伝わって、自然と笑顔になるのが自分でもわかる。

「慰めてくれてるの?」
そう問いかけると、ポコンと振動が伝わる。

「ふふっ。のぞみは優しいね」
そう声をかけると、ブランコを止め空を見上げる。
もうすぐ冬がやってくるのに、今日は暖かな日差しが降り注いで、空は碧く高い。
眩しさに目を閉じて、またブランコを漕ぎだす。
キイキイとブランコの軋む音だけが耳に届いて、少し淋しさが胸を掠めた。





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