第32章 繋ぐ
なお目線
朝の光に照らされ目が醒めると、いつもと違う天井に一瞬考えて、自室にいるのだと思いだす。
「なお様」
外から秋野の声がして、身体をゆっくり起こすと返事を返した。
「良く眠れましたか?」
朝の支度の準備を整えながら、声をかけてくれた秋野に頷く。
「信長様達は?」
「三日三晩祝いを続けるのが習わしですから、広間にいらっしゃると思いますよ」
「秋野は眠れたの?」
「交代に休みを取りましたから、大丈夫ですよ」
そう言う秋野の目の端は少し赤い。
「大丈夫?」
私はそっと秋野の目元に手を当てると、秋野はその手をそっと握ってくれて、大丈夫と微笑んだ。
「本当は三日三晩ですが、後一日ですから…それに今日は親しい方々だけなので、朝は帰られる方々でバタバタしますが…昼からは落ち着くと思いますよ」
「習わしを曲げてしまって…申し訳ないな」
わたしの体調を気にしての事と、わかってるだけに…申し訳なさが強い。
「貴様は気にすることはない」
外から声がかかり信長様が入ってくる。
「良く眠れた様だな」
私の前に座ると、頰に手を当てて微笑んでくれる。
「信長様は?」
「俺はいつもの事だ。大半が広間で寝てるがな」
そう言うと、私のお腹を撫でて、のぞみに声をかける。
ポコンと振動が伝わると、とても嬉しそうに微笑む信長様を見て、つい笑ってしまう。
「何がおかしい…」
不本意だと言わんばかりの表情がまた可笑しくて、クスクス笑ってしまう。
「ごめんなさい。信長様のその様なお顔が嬉しくて…。私も、のぞみも幸せです」
私が微笑みそう言うと、信長様はふっと微笑み私の手を取ってキスをする。
「つっ…恥ずかしいです。秋野もいるのに…」
「どこにおるのだ?」
そう言われて周りを見ると、秋野の姿はない。
「えっ!いつのまに…」
「くくっ…さっき気を利かせて出て行ったぞ」
気付かなかった私がおもしろいと言わんばかりに、笑うと私の隣に座りなおし、腰に手を回して私を膝の上に抱え上げた。
急な近付いた信長様の顔に、照れ臭くなって視線を落とそうとすると、唇にキスが落ちてくる。
「んんっ…」
何度も落ちてくるキスに幸せを噛み締めながら、そのキスに酔っていった。