第32章 繋ぐ
なお目線
「なお!」
バン!と大きな音を立てて、襖が開き信長様が部屋へ駆け込んで来た。
「信長様」
私は座ったまま手を広げると、信長様は私を抱きしめてくれる。
「…動いたのか?」
「はい!病気かと思って、びっくりしました」
秋野が、のぞみが動いたのが伝わっただけだと教えてくれて、是非報告をと信長様を呼びに行ってくれた。
信長様は、私の横に座りなおすとお腹にそっと手を当てる。
「のぞみ」
信長様が顔をお腹に近づけて、そう呼びかけるとさっきの様に、お腹に小さな振動が伝わってくる。
「おぉ!のぞみが返事をしてるのだな」
信長様の嬉しそうな笑顔に、私も嬉しくて信長様の手に自分の手を重ねる。
「はい!のぞみが動いてるのが分かるんです!」
私も興奮してしまって声がついつい大きくなる。
「お屋形様!なおに何か?!」
信長様が突然、座を離れたことで、私に何かあったのかと後ろから追いかけて来た秀兄達が、息を切らせて入ってきた。
「秀兄!のぞみが動いたのがわかったの」
私がにっこりと微笑んで告げた。
「そ!そうか!」
秀兄の心配顔が笑顔に変わって、私の隣に座る。
「…はぁ…何かあったのかと思った。心配させないでくれる?」
家康は溜息をついてその場に座り込む。
「良かったな!なお。順調に育ってるんだな」
政宗は私の前にしゃがみ込むと頭を撫でてくれる。
「くくっ…これだけの武将を動かすとは…産まれる前からのぞみは無敵だな」
光秀さんは周りの様子を見て笑う。
「良かったですね。なお様」
三成くんは素敵な笑顔で言ってくれた。
それから、宴そっちのけで順番に私のお腹を撫でて話しかけ、のぞみから返事が来るたびに、皆の笑顔が溢れた。
「お屋形様。そろそろ広間に…」
「何を言う!今日はもう良かろう!俺はここにいる」
駄々っ子の様な信長様に、秀兄が溜息をこぼす。
「信長様。これ以上は、なお様がお辛くなります。そろそろ…」
秋野がそう言うと、信長様は私の事を抱きしめてキスをする。
「それなら、仕方ない…なお大人しくしてるのだぞ」
そう言うと、真っ赤になった私を置いて広間へと歩いて行った。