第32章 繋ぐ
なお目線
「そうですね。短い様な…長い様な…。色んなことがありましたね」
秋野は褥の準備を整えてくれながら、話しかけてくれた。
「…秋野。ありがとう」
私は秋野に近寄ると、その身体にそっと抱きついた。
「秋野がいなきゃ…私はここに居なかった。
たくさん、愛情を注いでくれてありがとう。
嫌な思い、たくさんさせてごめんなさい。
これからも、私のお母さんで…のぞみのお婆ちゃんでいてくれる?」
私は、秋野の腕の中で顔をそっと上げる。
「はい…。
私もなお様に愛情をたくさん頂きました。
今日の日を迎えられて本当に良かった。
これからも
秋野はなおのお側にずっと…ずっとおります」
秋野の笑顔がだんだんと涙で濡れて、私もきっと同じ顔をしてる。
「秋野…前に私が何の為にここにいるのかわからないって言ったの、覚えてる?」
「はい」
「ここに来て…辛いこともたくさんあったけど、秋野や、秀兄達に支えられて、佐助兄やお母さんにも逢えて…そして、信長様に逢えて…ここにのぞみもいる」
私はそっと自分のお腹に手を当てて、秋野の顔を見上げる。
「だから、今はここに来て良かったって…幸せになる為にここに来たんだって、そう思うの」
そう言って微笑むと、秋野はそっと私の手に自分の手を当てて、微笑んだ。
「…理由がわかっても、なお様がここに居てくれるのなら…私はそれだけで十分です。
今までの分も、幸せになってください。
何度でも言います。秋野はずっとなお様の…そして、のぞみ様のお側におります」
嫌と言ってもダメですよ!と、笑う秋野と笑い合う。
「「あっ!」」
その時、お腹に当てた手に小さな振動が伝わった。
「あ、秋野!今の何?」
私は、びっくりしてお腹から手を離す。
「何かあったの?のぞみは病気?あぁ、どうしよう!秋野!」
私は秋野の肩を掴んでゆさゆさと揺さぶる。
「…ふふっ」
笑った秋野に、またびっくりする。
「何で?何で笑ってるの?どうしたらいいの?秋野!」
ドキドキして、どうしようもなく慌てていると、秋野は私を抱きしめてくれる。
「大丈夫です。病気でもなんでもないのですよ」
そう言うと…耳元で囁かれた言葉にへなへなと座り込んだ。