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『イケメン戦国』〜生きる〜

第32章 繋ぐ


なお目線

「…ドキドキする」
目の前の鏡に映った自分の顔は、別人。

「お綺麗ですよ。なお様」
鏡越しに秋野の優しい笑顔が見えて、その笑顔につられるように笑う。

あれから2ヶ月程過ぎて、今日は祝言の日。
私が妊娠中との事もあって、異例尽くしの婚礼になった。

「今日は、みんな揃ってるんだよね?」

「はい。信長様傘下の大名の方々も…たくさん参上されております」

「私。大丈夫かなぁ」
ふっと溜息がでる。

「秋野や、お母さんに色々習ったけど…上手くやれる気がしない」
所作や流れは大分理解したつもりでいるけど…不安が頭をよぎる。

「なお…大丈夫」
襖が開いてそこに笑顔のお母さんが立っていた。

「綺麗ね…お父さんにも見せてあげたかった」
私の横に座ると、鏡越しに少し哀しそうな笑顔で囁いた。

「お母さん…」
その顔に切なくなる。

「ごめんなさいね。泣かないのよ。せっかくの美人が台無し…。それに今の言葉は謙信様には内緒ね」
ふふっと笑うお母さんに、つられてまた笑顔が戻る。

「なお。信長様だけを見て、信長様の声だけ聞いて、全てを任せなさい」
お母さんは私の手をそっと握ると、私を見つめてそう言ってくれる。

「うん。分かった」
私は頷くとその手を握り返す。

「今日が終われば、後はなんて事ないわ…。私も近くに居るし、秋野も近くに居るから、自分の体調だけ気をつけて」
お母さんはそう言うと、行きましょうか?と私の手を引いて立たせてくれる。


広間はいつもより熱気に溢れていて、信長様は次から次へと来る人に礼を言ったり、お話したり…その隣で私は何とか笑顔を保って頭を下げていた。

「なお、辛くはないか?」
人が途切れたタイミングで、信長様が声をかけてくれる。

「はい」
小さく返事を返すと、そっと手を繋いでくれて微笑みをくれる。

「もう、大方の挨拶は終わりだろう。後少ししたら、下がれるように伝えておこう。のぞみが心配だ」
そう言うと、近くにいた秀兄に何か話している。

暫くすると、秋野がやってきて私は広間を後にした。

「信長様は、本日は戻られないと思うので、こちらでおやすみください」
連れてこられたのは、私の部屋。

「少し離れただけなのに…何だか懐かしい」
私は小さく呟いた。

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