第31章 甘える
第三者目線
信長は、なおの昼餉の事を頼むため厨へと足を向けた。
「信長様。どうしたんですか?」
厨を覗くと政宗が気付き声をかける。
「なおを子ども達の所へ連れてきた。昼餉は一緒に食べさせてやってくれ」
「それなら、みんな一緒に食べますか?祝言の準備で今日はみんな城にいるから」
そう言うと政宗は近くにいた女中に武将達への伝言を頼む。
「そうと決まれば、広間でなく外がいいな」
ぶつぶつと呟きながら、料理を作り続ける政宗を置いて、信長は厨の外へと出る。
なおの元へ戻ると、座らせた場所におらず辺りを見渡す。
「信長様〜〜!」
ブランコに腰掛け満面の笑みで、大きく手を振るなお。
「くくっ。女童の様だな」
信長は呟きながらなおの元へと向かう。
「昼餉はみんなで食べるぞ」
そう声をかけると、なおは嬉しそうに微笑む。
「では、私達は政宗様を手伝ってまいります」
梓と春は信長に頭を下げ、厨へと走っていった。
信長はなお隣のブランコに座ると、そっとなおの頭を撫でる。
「楽しそうで良かった。身体は大丈夫か?」
「はい。皆が気遣ってくれるから…また、役立たずに戻った…つっ、ごめんなさい。また…」
信長はブランコを降りるとなおの前に立つ。
「なお…」
足元を見て顔を上げようとしないなおの頰をそっと撫でる。
そのまま、顎に手をかけると上を向かせる。
なおは目を合わせる事が出来ず、下を向いていた。
「愛してる」
怒るでもなく、諭すでもなく、ただ一言呟かれた愛の囁きに、なおは息を詰まらせ、おずおずと目線を上げる。
「信長様…」
そこには、真剣な眼差しでなおを見つめる信長がいた。
「何度でも…何度でも言ってやる。
なお。貴様を愛してる。
何をしても。
何を言っても。
それは永遠に変わらない」
触れるだけのキスがなおの唇に落ちる。
「はい…はい信長様…」
その言葉だけで。
そのキスだけで。
信長が自分の全てを求め、愛してくれる事を、知った。
「…信長様。私も愛してます。ずっと…永遠に。
だから…ずっと甘えさせてくださいね」
そう返事を返した。