第31章 甘える
なお目線
「なお様!」
いち早く私を見つけた柚が、パタパタと小走りで駆け寄ってくる。
その声に皆がこちらを見て、あっという間に子ども達に囲まれた。
「俺は所用を済ませてくる。戻ってくるまでここにいろ」
信長様は私をそっと縁側に座らせてくれる。
「なお様。ややこが出来たの?」
柚はニコニコと笑いながら尋ねてくる。
「そう。ここにいるんだよ。のぞみって言うお名前なのよ」
私は近くにいた柚の手を取ると、そっと自分のお腹へと導いた。
「のぞみちゃん。はじめまして。ゆずです。早く出てきて、一緒に遊ぼ〜!」
柚はお腹に顔を寄せると、そっと撫でながら話しかけてくれる。
その様子が嬉しくて笑っていると、次から次へと子ども達が声をかけたり、お腹を触ったりしてくれる。
「みんな。ありがとう。のぞみが産まれてきたら一緒に遊んでね」
そう声をかけると、思い思いに返事をしてくれた。
「ほら、みんな遊ぶ時間なくなるよ。なお様はまだ遊べないから、行っておいで」
梓がそう声を掛けると、また遊び場へと向かっていった。
「「なお様」」
残った梓と春は、私の両隣に座ると私にそっとしがみついてくる。
「なお様が…ご無事で良かった」
春がそう呟く。
「政宗様にお聞きしました。本当に良かった…もう、もうお逢い出来ないかと…」
梓がそう言うと、二人ともポロポロと涙を流す。
「…二人とも、心配かけてごめんなさい。なかなか会いにも来れなくて…この場所を守ってくれてありがとう」
私は二人の頭をそっと撫でる。
「なお様の妹だから。当たり前です」
春は涙を拭いながら、顔を上げる。
「そう!妹だから!何だってやります!」
梓は涙に濡れた顔で、にっこり笑う。
「頼もしい妹達がいて、私は幸せだね」
私も出てきそうだった涙を堪えて笑った。
「私達も触って良いですか」
春の問いに頷くと、二人はそっと私のお腹に手を当てた。
「私たちがなお様の妹なら、のぞみは私たちの家族ですね」
春はとても嬉しそうに言ってくれる。
「早く出ておいで!みんな待ってるよ!あー!男の子かな?女の子かな?どっちでも、たくさん可愛がってあげるからね!」
梓の気の早い可愛がり宣言に、私と春は二人で笑った。