第31章 甘える
なお目線
広間にはもうみんな集まってて、久しぶりに見れたみんなの顔にホッとする。
「今日も俺の、すぺしゃる御膳だぞ」
政宗がお母さんに聞いたスペシャルが凄く気に入ったみたいで、何にでもスペシャルをつけたがるって聞いてたけど、本当に使ってるのを聞くと何だかおかしくて、クスクスと笑ってしまう。
「久しぶりだな。お前の笑顔。おかえりなお」
政宗が以前のように、ニカッと笑ってくれる。
『お母さんと秋野と食べるご飯も美味しかったけど、みんなで食べるともっと美味しい』
私はいつも以上に、箸が進むのを自分で感じていた。
みんなが、微笑んであれこれと話をしたり、気遣ってくれたり、揶揄われたり…それがとても嬉しくて、楽しくて…。
そして、隣で目が合えば微笑んでくれてそっと頭を撫でてくれる信長様。
皆が私を大切にしてくれているのがよく分かる。
そして、それが本当に掛け替えのない時間で…尊い時間だということも…。
「ここに帰ってこれて…良かった」
小さく呟く。
「貴様の帰る場所はここだからな」
信長様がそっと私の頭を撫でる。
「はい!」
返事を返すと、幼子のようだと光秀さんに揶揄われ。
その言葉にムキになる私の様子に、皆がくすくすと笑いだす。
最後には、私も可笑しくなってきてみんなで笑った。
その後のお茶の時間も、みんなで他愛もない話をして楽しかったけれど、身体がだんだん重くなる。
「なお。天主に戻るぞ」
信長様にそう声をかけられる。
「はい…」
自分でも分かってるけど…少しの淋しさが胸に残る。
「なお。また明日もあるだろう」
秀兄が私の頭を撫でてくれる。
「…無理したら、また寝てることになるんだから…ほら今日の薬…飲んで大人しくしてなよ。…俺の仕事増やさないで」
私の手の上にそっと薬を置いて、言葉とは裏腹の優しい笑顔の家康。
「昼餉持って遊びに行ってやるから」
政宗もそっと頭に手を置いてくれる。
「今日の分は揶揄い終わったから、もういいぞ」
笑いながら言う光秀さん。
「後で、御伽草子をお持ちいたします」
エンジェルスマイルの三成くん。
そんなみんなの様子に、少し淋しさが和らいでいく。
「また、明日もある。その次の日も、またその次の日も…ずっと一緒だ」
信長様はそう言いながら私を抱きしめた。