第30章 夢
第三者目線
「佐助。貴様の話から聞こう」
信長が声をかけると、佐助は居住まいを正して喋り始める。
「俺たちがこちらに来た時、雷にうたれました。それがワームホールの発生条件の一つです。
正確には、うたれてはないとは思いますが…近くに落雷があった事は確かです。
そして…こちらに来てからずっと観測して来たワームホールが、ここ数ヶ月活性化して、更に京にあったワームホールの場所が少しずつ安土に近づいています」
佐助は一気に話すと、皆を見回す。
「…つまりなおに予知が出来るとするなら、近いうちにワームホールが…」
沙耶は呟く。
「はい。そうです。ワームホールが俺たち3人を何処かに運ぼうとしている。
そして…後一つ、これは仮設でしかありませんが…なお自身の精神状態にもワームホールの発生が作用している気がします」
佐助の言葉に、どうゆう事だと…皆の視線が集中する。
「なおが初めて命を断とうとした日。ビルの屋上でしたが…その日も晴れていた空が急に曇り、落雷があったんです。
その時は、避雷針…雷を避けるためのものに雷が吸収され、なおと俺の近くに落ちる事は無かった。
そして、沙耶様。
その時に、なおが飛ばされなかったのは何故か?はわかりませんが、もしかしたら…無意識の内に沙耶様の身に起きている事をなおが、感じ取っていたなら、何処かへ逃がそうという意識が働いていてもおかしくはない。
なお自身が飛ばされた時は、言わずもがなです。
俺が飛ばされたのは何故か?分かりませんが、時間が時間として機能していないのなら…俺に逢いたいと思ってくれていた時期と、来世の時間が合致したのかも知れません。
そう考えると、今は子を宿して不安も多くなる時期…何かの引き金で不安定になり、呼び寄せてもおかしくはないんです」
佐助は皆を見ると、皆一様に頷いている。
「なおを不安定にさせなければ良いのか?」
信長がそう聞くと佐助は首を横に振った。
「後一つ…謙信様、信長様にして頂かなくてはならない事があります」
「なんだ」
「お二人には…死んでいただきます」
静かな声が広間に大きく響いた。