第30章 夢
第三者目線
なおの相手を秋野に任せ、沙耶は広間へと足を向けた。
「失礼致します」
沙耶は声を掛け、広間への襖を開ける。
「沙耶、すまぬな」
信長は中へ入るよう促す。
「沙耶、なおは食べれたか?」
政宗は少し心配そうに声をかける。
「はい。全部は無理でしたが、半分は…」
沙耶はそう答え、柿の事も一緒に伝える。
「そうか…果物もいいな。早速今日頼んでおこう」
皆はなおの食欲が出てきた事に安堵する。
「沙耶…貴様を呼んだのは、祝言の事ではない」
場が落ち着いた所で、信長は声をかける。
「なおに何かありましたか?」
沙耶は表情を曇らせる。
「なおが、この頃魘される。前は過去の事でそうなっていたが…ここ数回違うのだ」
信長はなおの起きた後、話すことを秋野に告げる。
「…雷が襲ってくると」
沙耶は少し考え込むように、目を閉じる。
「あぁ…場所も、一緒に居るのも毎回同じだ」
信長は、その時に自身と、佐助が居ると伝える。
「なおの力の事は、未知数とお伝えしておりましたが…」
意を決したように沙耶は目を開け、信長を見つめる。
「あの子は多分【予知】が出来ます」
その言葉に皆が息をのみ、言葉の続きを待つ。
「あの子は幼すぎて、覚えていませんが…父の…私の最初の殿方が死ぬ事を、同じ様に夢で見ておりました」
沙耶は少し淋しそうにそう告げた。
「ただ、それ以来ない事ですので…確実とは言えません。それより問題なのは…雷」
「雷が何かあるのか」
秀吉がそう聞くと同時に、広間の襖が開いた。
「その件については、俺の話も聞いてください」
そこには、佐助の姿があった。
「俺にも聞かせろ」
「謙信様」
沙耶は驚いた様に声を上げる。
「なおが子を身籠ったと聞いて来た」
「…はぁ。あんたには関係ないでしょ」
家康の言葉に、すらりと刀を抜く。
「沙耶はなおの母だ。ならばなおは俺の子も同じ…様子を見に来て何が悪い」
「謙信様…刀は納めて」
沙耶はキッと睨むと、謙信は渋々その刀を鞘に納めた。
「家康様。申し訳ありません」
頭を下げる沙耶に、家康は別にいいと返事をした。
「その件についても話さねばならぬな」
信長はそう言うと、2人を招き入れた。