第30章 夢
なお目線
眩しさに目を開けると、私を覗き込む様に見る信長様の顔が近くにあって、嬉しさがじわじわと湧いてきて、頰にそっと触れる。
「朝から…愛らしいことを…」
そう言ってキスをしてくれる。
「信長様…おはようございます」
「あぁ、おはよう。昨日は魘されずに良く寝れたようだ」
「信長様も眠れましたか?」
「あぁ、久しぶりに良く寝た…なおがおると良く眠れる」
笑顔の信長様を見て、私も自然に笑みが溢れる。
私は信長様の身体を強く抱きしめる。
「私…幸せです。信長様ありがとう」
好きな人の腕の中にいることが、こんなに幸せで満ち溢れたものだと、私は知らなかった。
もっと、信長様を感じたくて、その胸に頬ずりしてしまう。
「つっ…なお、そういうことは俺を煽るのだといい加減に分かれ」
昨晩の様に熱を帯びた声が聞こえたかと思うと、深く甘いキスを何度も繰り返されて、息が上がっていく。
いけないと分かっているのに、身体の芯は熱を帯び自然と腰が浮いてきて…。
「まだ…夜明けまで時間がある…なお…貴様をよこせ」
熱を帯びた声で囁かれ、私は返事の代わりに、信長様にそっとしがみついた。
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甘い時を過ごした後、信長様は着替えを済ませて書簡に目を通していた。
私は褥に横になったまま、その姿を見ていた。
書簡から目を上げた信長様と、視線が絡んで自分が見ていたくせに、ついと目を逸らしてしまう。
「ふっ…」
笑う声がして信長様が近づいてくるのがわかるけど、そちらを見れずにいると、そっと抱き起こされる。
「…あ、あの…」
そのまま褥を出されて、文机まで行くと信長様の膝の上に横抱きにされる。
「なんだ」
信長様はまた書簡に目を落としながら、返事だけしてくれる。
「じゃま…」
「ここにいろ」
邪魔じゃないかと尋ねる言葉は、一蹴される。
書簡をめくる音が、静かな天主に心地よく響く。
『恥ずかしいけど…暖かくて、離れたくない…』
私は、信長様の胸に頭をそっと預けた。