第29章 一緒に…
なお目線
「なおおるか」
話をしていると、信長様がやって来た。
「沙耶と秋野もおったか、丁度いい」
そう言うと私の前に羽織をはためかせ、ふわっと座る。
「なお。改めて言わせてもらう」
低く響く声に、何か大切な事だと分かり、しっかりと信長様の顔を見て見つめた。
「なお。
俺はこの先、貴様と生きていく。
貴様も俺と生きていくと決めろ。」
信長様の力強い言葉に、私は一度小さく頷く。
そして、その眼をしっかりと見つめた。
「はい…ずっとそばにいさせてください。
何があっても、もう逃げない。
貴方と生きていきます」
そう告げた。
信長様は優しく微笑むと、私をそっと抱きしめてくれる。
「今宵から天主に来い。もう、一刻も離れることは許さぬ」
私はその言葉に頷くと、信長様はそっと私の身体を離す。
そして、二人の母の方を向く。
「沙耶、秋野。貴様らの娘、貰い受ける。良いな」
二人の母は、にっこり笑うと頭を下げた。
「「娘をよろしくお願いします」」
全く同じ言葉を言うと、二人は見つめあってまた笑い合う。
「「娘を泣かしたら、信長様とて容赦は致しませんよ」」
とまた同じ事を言う二人に、今度は四人で笑ってしまう。
「お母さん、秋野。ありがとう。
私。生きてて良かった」
私は頭を下げた。そのまま涙が溢れて顔を上げれなくなる。
「では、天主に行くぞなお」
信長様はそんな私の身体を起こすと、横抱きにして立ち上がる。
信長様の肩口に顔を埋めて、しっかりとその首に抱きついた。
泣いてることは分かっているのに、二人は何も言わずに見送ってくれる。
「二人の子どもにしてくれて…ありがとう」
私が小さく呟くと、信長様は天主へと歩き出した。