第29章 一緒に…
なお目線
私は昨日の出来事を、母と秋野に話した。
秋野は凄く驚いたのに、母はふふっと笑うだけで…。
「お母さん、何か知ってたの?」
私は不思議に思い、そう尋ねる。
「そうね。二人のこと頼まれたから、知ってたわ」
なんてことない様に言うから、こっちがびっくりしてしまう。
「いつ?何で?」
矢継ぎ早に聞く私に、母はまた笑う。
「なおがあの子に初めて会った夜にね。私にも逢いに来てくれたのよ。昨日の夜、二人が望めば逢えることも知っていたけど…言ってはいけなかったから、ごめんね」
ごめんねと言いながら、ニコニコしている母。
「それも、沙耶様のお力なのですか?」
秋野が尋ねる言葉に?マークが飛び交う私。
「力って何?」
「そうね。なおも20になったから、話しておかなきゃね」
そう言って母は話し始める。
浅見家が代々巫女の家系である事。
その血を女だけが受け継いでいく事。
母は勿論、私にも何らかの能力がある事。
聞いてもピンとこない話しばかりで…頭の中に?が増えていくだけだった。
「なおは、手当の能力があるわ。それは、家康様とお話をした時に確信したから…他はまだ分からないわね」
「何で?私何かしたの?」
「先の戦で、【手当】をしたわよね」
「うん。お母さんがやってくれてたように、皆んなに…」
それが何か悪かったのかと、一瞬不安になる。
「ふふっ。悪くはないわよ。逆に、貴方が【手当】した後、傷の痛みに魘される人が誰一人としていなかったから、不思議だったと仰ってたの」
沙耶は安心させる様に、なおの頭を撫でながら話を続ける。
「なおが【手当】した事で、傷の痛みが消えたの。傷は治らないけどね」
私は信じられなくて…自分の手をじっと見る。
「ふふっ。信じられなくて当たり前よ。私でさえ未だに半信半疑だからね。でも、人を想う気持ちがなければ、それは発揮されないわ。それに、相手に受け取る意思がないときも無理みたいね」
母は一つ溜息をつくと私を見つめた。
「貴方には…【手当】が出来なかったから…」
そう言った母の顔には哀しみが浮かんでいて…。
「ごめんなさい」
そう呟いた。
「謝ることではないわ。でも、これからどんな力が出てくるか分からないから…気をつけておいてね」
その言葉に私は頷いた。